Bluetooth技術は、探し物探索や資産追跡から屋内測位、アクセスコントロールまで様々な位置情報サービスの活用事例を長年にわたり実現してきました。そしてこれらのイノベーションの需要は更に増え続けています。「Bluetooth市場動向2020」によると、Bluetooth対応位置情報サービスデバイスの年間出荷台数は2024年に5億4300万台に達すると予測されており、2019年から2024年までの年平均成長率は34%と見込まれています。位置情報サービスは今なお最も急速に伸びているBluetoothのソリューション分野とされています。

この度、芳和システムデザインの工藤美那子氏と話す機会に恵まれ、Bluetooth技術をどのように用い、位置情報サービスを提供しているのか、荷物探索ソリューションを含めご説明いただきました。また、同社の主力製品であるBluetooth LE対応のビーコンシリーズをどのように活用し、医療施設や工場、建設現場、祭事などをサポートしているのかについて、併せてお話を伺いました。

工藤 美那子氏とのQ&A

 当社のビーコンソリューションはホテルでの荷物の受け渡し業務を改善するのにどのように活用されていますか?

芳和システムデザインとホテルオペレーターの株式会社グリーンズ、オムロン フィールドエンジニアリング株式会社の3社共同でBluetooth LEビーコンと専用のスマートフォンアプリから構成される「荷物探索システム」を利用した実証実験を行いました。このソリューションによりホテルスタッフは宿泊客の荷物を容易に探すことができます。フロントデスクに預けられた荷物に番号が割り振られたビーコンを付け、同じ番号をアプリに入力するとビーコンが光と音を発しスタッフに荷物の場所を知らせます。

コンフォートホテル博多内にあるフロントでの荷物の受け渡し業務にビーコン、タブレット用アプリケーションを活用し、本システムがホテルスタッフの業務負荷軽減に効果が認められるかを検証しました。

実験後、従業員に話を聞くと、「時間短縮の効率化を感じるようになった」、「タブレットの操作感が良い」、「スムーズに利用できる」など肯定的な意見が聞かれました。

芳和システムデザインのビーコンソリューションは他分野でも活用されていますか?

2020年の3月に発売を開始したスピーカーとLEDを内蔵したBluetooth対応のビーコン製品は製造工場での機材探しに活用されています。製造業界では日本の労働力人口の減少に伴い、次世代に技術継承する人材確保が困難なため、その解決策として業務改善が急務となっています。

その改善すべき業務のひとつが製造工程で使用する精密機器の管理です。大量生産から少量多品種にシフトした現場では生産ラインに対応するため50メートル以上ある倉庫内で棚ごとに多様な精密機器を保管しており、その中から機材を探すのに時間がかかっていました。

併せて高価な精密機器を紛失したり、整備されないまま放置されるなどの損失も生まれていました。ビーコンはそれらの課題に対する設置・導入コストの低い解決策となります。

当社のビーコンシステムを活用する主な利点は3つです。

  • ビーコンは電池交換可能で平均5年間の使用が可能
  • ビーコンと携帯端末、アプリケーションだけで利用できる
  • 電源・設備工事が必要ない

上記の理由から製造業で利用されつつある当社のビーコンを、今後は特定の業種に特化したアプリケーションのラインナップを増やすことで製品のシェアを伸ばしていきたいと考えています。

 ソリューション開発にBluetooth技術を選択した理由についてお聞かせください

当社がBluetooth技術を使用する理由は2つあります。

1つ目はBluetoothが携帯端末に採用され、広く普及したこと、2つ目は詳細なBluetoothの仕様公開により製品開発がし易い点です。近年、携帯端末の性能向上とともに多くの機種にBluetoothが採用され、世界中に普及しました。当社はこれを受けてIoT市場の規模拡大を視野にBluetooth LEビーコンの開発に着手しました。

Bluetooth SIGが公開している仕様を元に回路設計から部品調達、組立てを行い、顧客のサービスに合わせたカスタマイズができるよう電波の設定変更アプリを作成しました。総勢4名のエンジニアが3ヶ月あまりで開発した現在の主力製品であるビーコンソリューションは2014年に発売を果たし、それから7年が経った今では、GPSやWi-Fiの電波が届かない場所を補完する位置測位として活用されています。他にもスマートフォンの非接触型決済や、施設内の観光ガイド、医療器具や作業者の所在確認と幅広い業種で利用され、累計15万台以上のBluetooth LEデバイスを納入するに至りました。

芳和システムデザインはBluetooth技術を他にどのように位置情報サービスに活用していますか。

当社のビーコンは、子どもの見守りシステム、工場内の運搬作業進捗管理、多言語観光ガイド、祭事の位置情報共有などでも納入先で活用されています。

子どもの見守り

子どもがビーコン端末を携帯し、特定の場所に到着した場合に保護者のスマートフォンアプリにアラートを送信する等の機能検証のため、2018年10月から12月まで実証実験を行いました。

プレスリリース(PDF):「子どもの見守りサービス」に関する実証実験の実施

関連企業:損害保険ジャパン株式会社、株式会社ナビタイムジャパン

工場内の運搬作業進捗管理

ルート変更の多い部品の運搬作業はベテラン作業員にしか行うことができませんでした。そこでルート上にビーコンを設置し、運搬車両に取り付けたタブレットで運搬ルートを指示することで業務を効率化しました。さらに作業員の位置から運搬状況を把握し、遅延が発生した場合には管理者に報告する等、工場における運搬業務の負荷軽減に貢献しました。

導入事例:部品運搬作業進捗管理システム

関連企業:株式会社デンソーエスアイ

多言語観光ガイド

施設内に設置したビーコンの電波圏内に入ったスマートフォンアプリに、施設の関連情報を通知するメッセージを表示します。日本語、英語、中国語(簡体)、韓国語など複数の言語に対応しています。

プレスリリース:東京タワー×iBeacon『景観案内』アプリサービス提供のお知らせ

関連企業:株式会社夢現舎、株式会社アウリス

祭事の位置情報共有

移動する踊り子の進行位置をウェブサイトおよびスマートフォンアプリで確認できるサービスです。徳島県と東京都の阿波踊り会場で当社のビーコンが使用されています。

徳島県徳島市の阿波おどりでは建物にビーコンを複数台設置し、踊り手側のスマートフォンアプリが電波を受信するとサーバーに位置情報が送信されます。その位置情報をもとにウェブサイトのマップ上にピンが立てられ、踊り手の位置がリアルタイムで表示されます。

関連企業・団体:Code for Tokushima、徳島大学、徳島市

東京都高円寺の阿波おどりは、踊り子と並行している提灯にビーコンを装着し、来場者のスマートフォンアプリが電波を受信すると位置情報がサーバーに送信されます。スマートフォンアプリのマップ上にピンが立てられ、踊り手の位置がリアルタイムで表示されます。

関連企業・団体: NPO法人東京高円寺阿波おどり振興協会

導入事例:阿波おどりの連の位置がリアルタイムで分かる!

Bluetoothビーコンのソリューションはどの業界で活用することが最もメリットがあると感じますか

医療業界と建設業界です。医療現場では病棟内にある医療機器の探索に利用されています。患者の処置が遅れると人命に関わるため、機器を素早く探索することは極めて重要です。

建設業界ではビーコンでフォークリフトなどの建設車両の稼働率を数値で可視化することにより、案件にかかる費用を削減する指標として活用されています。他には工場作業員の健康管理や人員点呼に温度・加速度センサーを内蔵したビーコンが利用されています。例えば地下空間の掘削作業では照明の数が限られている現場で、作業員の体調の変化や事故に目視で気づくのは困難です。このように、ビーコンのサポートにより更なる安全性が地下の掘削工事現場でも確保されています。

事故により作業員が動けなくなった場合などの非常時に作業員の位置の特定に役立てられるなど、今後もビーコンが活用されていくでしょう。

その他、日本における導入事例で共有可能なものはありますでしょうか。

 当社は下記のBluetooth LE通信機器のハードウェア設計と製造、アプリケーションの動作テストを担当しました。

自動販売機の電子決済

自動販売機コミュニケーションサービス「Tappiness(タピネス)」は自動販売機にビーコン端末を接続することでLINE株式会社の関連サービスLINE Payの利用を可能にしました。

キリンビバレッジ株式会社が展開しており、2019年の7月には設置台数が50,000台を突破しました。

出典:https://www.kirin.co.jp/company/news/2019/0808_04.html

Bluetooth技術はどのような市場課題の解決に役立ったと感じますか。

都市開発を担う建設業界では働く環境をプロジェクトによって変化させなければならず実際の稼働率や、運搬車両の待機時間を計測するための設備投資がかけられませんでした。

また環境に耐えられる性能要件を満たす製品は高価であるため、そのコストをかけられないのが現状です。

その課題を解決する手段としてBluetooth技術が活用されています。

具体的にはビーコンに各種センサーを内蔵し、計測する対象に設置。

ビーコンから発信されたセンサーデータは受信機を経由してサーバーにデータを送信し、利用者のソフトウェアに合わせてグラフ化することにより、機材の故障率を予測することができます。このように建設業界や医療業界などあらゆる業種で、業務を可視化して改善を促す取り組みが行われています。

将来的にBluetoothの方向検知機能を活用する予定はありますか。

当社ではBluetoothの最新規格に対応した製品開発をしています。

製品の発売時期は未定ですが、既存の製品にBluetoothの新たな機能を取り入れ、位置測位の機能を更に強化することを目標に開発を進めています。同時に、調査結果を公式HPのブログ記事に公開する活動を通してBluetooth技術のさらなる発展に貢献していきたいと考えています。