Insight Into Market Demand
for Electronic Shelf Label
StandardizationESLの規格化に対する市場の需要とは

電子棚札（ESL）は20年以上前から市場に存在する技術です。価格や商品情報のみを表示する当初のシンプルなLCDディスプレイから、より高品質で多機能なIoT （モノのインターネット） プラットフォームへと進化を遂げ、顧客対応とバックエンド業務におけるメリットの両立を実現してきました。ESLの潜在市場（Potential Addressable Market、PAM）は小売や倉庫、ヘルスケアをはじめ多くの分野にまたがり、ラベル数百億枚にも相当する膨大な規模と考えられていますが、現状ではその真の市場可能性の実現には遠く及びません。

普及が進まない最大の要因は、おそらくESL市場の細分化にあります。すなわち、互換性のないさまざまなソリューションの乱立と、統一的なESL規格の欠如です。多くの小売業者が、市場の細分化に伴うベンダーロックインや、複数のベンダー間の相互運用性の欠如を懸念し、ESLソリューションの採用をためらっています。これが小売業者にとって、あらゆる店舗にESLを導入し、時間とともにスマートリテールのさらなるユースケースを採用していこうという意欲を削ぐ原因となっているのです。

ABI Researchのリサーチディレクター、アンドリュー・ジニャーニ（Andrew Zignani）氏は次のように述べています。「小売業では、業務効率化、購買率向上、再来店促進を支援する手段として、ますますIoTへの注目が高まっています。しかし、ベンダーロックインや相互運用性、拡張性、他のスマートリテールの取り組みとの連携が可能かどうかを巡る懸念から、ESL技術の採用に消極的な小売業者もあるのです」

先日Bluetooth SIG（Special Interest Group）は、ESL規格に対する潜在的な需要について、スマートデバイスおよびIoT市場の変革に関する分析・追跡・予測分野における世界的なトップ企業であるABI Researchに調査を依頼しました。

市場が求めるESLの標準規格

電子棚札（ESL）に置き換え可能な紙の棚札は、世界全体で数百億枚にものぼり、莫大な市場が存在します。しかし、ABI Researchの推定によると、2022年末時点でのESLの設置枚数は約7億8800万枚です。つまり、現時点で普及しているESLは、市場の潜在的可能性に比べてごくわずかなのです。その大きな要因のひとつが、ESL市場の細分化にあります。

また、技術の陳腐化への懸念や、より優れたソリューションの出現への将来的な期待から、ESLや小売IoT技術の採用を控える小売企業も存在します。さらにESL採用に関する障壁として、複数のインフラを導入する必要性や、相互運用性への懸念、セキュリティとプライバシーに関する懸念、長期的な小売戦略をサポートする必要性、導入やメンテナンスにおける周知不足や煩雑さなどがあります。

ESLベンダーの多くが過去数年で記録的な売上を報告しており、ESLが未来における小売店舗のデジタル化の根幹要素となることは明らかです。ESLは、顧客エンゲージメントと顧客体験を向上させ、現地でのフルフィルメント、店舗自動化、業務効率化を促進し、よりスムースな会計を実現します。しかし、スマートリテールの大規模展開の成功は、さまざまなユースケースにわたっての相互運用性と、情報収集および共有が鍵となります。そのため小売企業は、相互的かつ効果的に動作できないサイロ化されたソリューションを避ける必要があり、オープンな規格によって実現される、オープンかつモジュール化されたプラットフォームへの注目が高まる見通しです。これにより、より広範なスマートリテールの無線ネットワークの一部としてESLを組み込むことが可能となり、複数の異なるユースケースやデバイスからデータを集約・分析し、よりインテリジェントな洞察やサービスを生み出すことが可能になるのです。これを達成し、市場の成長を加速させるために、複数の大手小売企業が求めていたのがESL技術の規格化です。それにより、①導入しやすく、②低コスト、③低消費電力、④相互運用が可能、⑤高セキュリティ性能、といった特徴を備え、複数のベンダーから入手でき、複数のユースケースに対応可能な将来性のあるESLが実現します。

Bluetooth^®︎技術は、ESLとスマート小売市場に、規格に基づくアプローチを提供します。

Bluetooth ESL規格とは

2023年初頭、Bluetooth SIGはESL市場に向けて新たな無線規格の公開を発表しました。その目的は、スケーラブルで低消費電力、セキュアなESL規格を策定し、ESL市場が持つ潜在的な可能性を最大限に引き出すことにあります。Bluetooth^®︎ ESL規格は、Bluetoothコア仕様5.4で導入された主要な新機能拡張であるPAwR（レスポンス付き定期アドバタイズ）やアドバタイズデータ暗号化などの機能を活用し、ESL市場で求められる安全かつスケーラブルなESLの展開を実現します。

真のグローバルESL規格の確立により、小売業者は、相互運用性があるという安心感のもと、複数のベンダーからESLシステムの構成品を調達する自由と自信を得られます。ジニャーニ氏は「Bluetooth^®︎ ESL規格の登場は、IoT技術への投資を検討している企業にとって、潜在的な障害を削減し、導入と革新を加速させるでしょう」と述べています。市場はまさに、導入障壁を最小限に抑え、円滑で相互運用性のあるESLのエコシステムを構築するために、実績ある製品認証プログラムに裏打ちされたBluetooth^®︎ ESL規格を求めていたのです。

詳しくは、「Bluetooth^®︎電子棚札（ESL）規格がスマートリテール市場に与える影響」をご覧ください。このレポートでは、新しく公開されたBluetooth ESL規格によって、相互運用性のあるESLエコシステムをどのように構築できるかを考察しています。

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