2020年1月に、Bluetooth SIG(Special Interest Group)がBluetoothと世界のつながり方を変える新たな仕組みを発表しました。この新たな音声規格LE Audioを通じて、次世代のBluetoothオーディオはその性能を飛躍的に高めることになります。今回、LE Audioに待望の新機能が追加されました。
高品質かつ低消費電力
これまでも、Bluetooth® コミュニティの開発者たちによってSBCコーデックで数々のイノベーションが生み出されてきました。ですが、このLC3(Low Complexity Communications Codec/低複雑性コミュニケーションコーデック)により、ワイヤレスオーディオの限界はさらに広がっていきます。
LC3は、少ないデータ容量で高音質なオーディオを実現する、新開発された省電力オーディオコーデックです。LC3により、音質と消費電力という製品設計上の重要な特性のトレードオフが改善し、開発における柔軟性が高まります。
WiFore ConsultingのNick Hunn氏は、LC3の特徴として高効率・低消費電力・低レイテンシーを挙げており、コーディングから送信、デコーディングまでにかかる時間は20ミリ秒であると述べています。「LC3は、あらゆるワイヤレスのオーディオシステムにおいて重要な役割を担うことになるでしょう。ワイヤレスで送信できるほどオーディオ信号を小さく圧縮します。そして受信側でデコーディングすることで音楽へと戻るわけですが、このとき音質に一切の劣化が発生しません。コーデック設計に精通した企業が、Bluetoothの新コーデック開発に協力してくれたことは非常に幸運でした」。
「この10年間で技術は飛躍的に進歩しました。LC3ではSBCと同等の音質で通信時間が半分で済むようになったのですから。これにより、ワイヤレスデバイスのバッテリーへの負担が削減されます。フォームファクターの小さなデバイスでも充電を気にせず使い続けられたり、イヤホンを小型化できたりといったメリットを享受できるでしょう」。
– Peter Liu
LC3の違い
フラウンホーファーIISの低遅延オーディオコーディング責任者Markus Schnell氏は「LC3によってBluetooth® ヘッドセットで最先端の音質を楽しめるようになります。すでにHD Voice+ VoLTEネットワークに導入されています」と述べています。モバイルサービスにおいては、標準化されたEVS(Enhanced Voice Services)オーディオコーデックの導入により、一段階上のレベルの通話品質や音質が実現しています。このレベルの音質がBluetooth デバイスでも再現されるのです。
データレートが半減するため、バッテリーが長持ちするようになり、デバイスの小型化につながります。
音楽においては、LC3によって2つの抜本的な改善が見込めます。まず、音声の種類を問わず、非常に優れた音質で転送できること。さらに転送量も半分に削減されるため、バッテリーの持ちが伸び、機器の小型化にもつながります。「徹底的なリスニングテストを行った結果、Classic Audioに含まれるSBCコーデックと比べ、LC3コーデックの場合ビットレートを半分におさえても音質的に優位であることが分かっています。この省電性を活かし、よりバッテリーの持ちが良い製品が開発できます。また、バッテリーの持ちを伸ばす必要がないのであれば、より小型化したバッテリーを使用してフォームファクターを抑えた製品開発が可能となります」とSchnell氏は話します。
ユーザーにより良いオーディオ体験を
LC3は消費電力の削減、音質や利便性の向上などを通じてユーザー体験を飛躍的に高めるコーデックです。データ量が半分でも音質が向上するということは、消費電力が半分で済むということでもあります。この省電力の特性を利用し、バッテリーの持ちが良い製品が開発できます。また、バッテリーの持ちを伸ばす必要がないのであれば、より小型化したバッテリーを使用してフォームファクターを抑えた製品開発が可能となります。さらに、Bluetooth® 技術に標準対応した補聴器が実現します。これまでBluetoothヘッドフォンやイヤフォンユーザーが享受してきたものと同等のBluetoothオーディオのメリットを、聴覚に障害のある方でも受けられるようになり、ワイヤレスでの通話や視聴が可能になるのです。
LC3のリリースに伴い、主要3分野のうち2つが完成したことになります。LC3がBluetoothのオーディオの品質をいかに高めたか、ご自身でお確かめください。