本稿はIoTの様々なワイヤレス接続について比較を行うシリーズ記事です。これまでの2本の記事では高度なワイヤレス技術を複数ご紹介し、IoTでの活用においてとりわけ重要な特性の比較を行ってきました

本稿を皮切りに、以降の記事ではIoTにおける特定の用途に着目し、それぞれの分野においてとりわけ重要となる特性を考察しながらワイヤレス技術を比較していきます。今回の記事で焦点を当てるのは、IoTの「状態監視」です。

「状態監視」とは何か? どういった場面で運用されるのか?

「状態監視」は、機械や装置の動作状況を継続的に監視する機能です。装置の故障につながりかねない重大なパラメーターの変化を予測することを目的としています。これは「予知保全」とも呼ばれる考え方です。

状態監視では、時間とともに発生する異常な変化を検知するため以下の点について注意する必要があります。

  • 監視する機械のパラメーターを適切に選択する
  • パラメーターを定期的に測定する
  • 測定間隔を適切に選択する

状態監視は、コンプレッサー、ポンプ、モーターといった回転を伴う機械でしばしば活用されます。

また産業、製造、スマートビルディングシステム、交通機関といった分野でも多く見られるソリューションです。監視対象のパラメーターとしてとりわけ一般的なのは、温度、湿度、振動、圧力(油圧や漏れの検知)、電流、電圧(機器の経年変化の検知)などです。

重要パラメーターの継続的な監視はどの機械でも必須というわけではなく、定期的な測定で十分な場合も少なくありません。常時監視するか、定期的に測定するかの判断は、基本的に対象となる機器の種類と重要性に基づいて行います。一般的に、機器の故障はコンポーネント単位で発生します。そのため、監視においては、重要なコンポーネントに関連した故障に注目する必要があります。

予知保全には以下のようなメリットがあります。

  • 機械のダウンタイム回避による生産効率の向上とコストの削減
  • 故障の早期発見により深刻な故障に発展する前に対処
  • 必要なタイミングでの保守。要不要を問わずあらかじめ決められた間隔での保守は不要
  • 故障発生の原因を正確に検出でき、保守が高効率化

状態監視におけるワイヤレス技術の最も重要な特性

ワイヤレス技術を状態監視に用いるには、いくつかの重要な特性を考慮する必要があります。本稿を含む一連の記事では、ワイヤレス技術の各用途におけるこうした最も重要な特性をご紹介しています。状態監視において最も重要になるのは信頼性、レイテンシー、通信距離、そして消費電力です。

それではこれらの特性がなぜ状態監視の場合に重要なのかを見ていきましょう。

信頼性

状態監視において、ワイヤレスネットワークの信頼性は極めて重要です。信頼性の低いネットワークで送信されるセンサーデータは、役に立つどころかかえって多大な問題を引き起こすおそれがあります。特に時間管理が重要な用途において、これは重大なリスクになりかねません。

そのため、ワイヤレスネットワークはプロトコルから設計、実装段階にいたるまで様々な技術を導入して信頼性を向上させています。代表例として次のような技術が挙げられます。

  • 送受信するデータパケットのシーケンスを追跡し、エラー発生時にデータを再送信
  • エラーの検出と訂正(データ冗長化、前方誤り訂正技術等)
  • 送信側における出力の強化
  • 受信側における感度の強化
  • 受信側で複数のアンテナを導入
  • 周波数ホッピングで干渉を避ける

しかし、ワイヤレスネットワーク技術であればどれも同じというわけではありません。特に信頼性や堅牢性を重視したワイヤレスネットワークもあるため、各ワイヤレスネットワークのメカニズムを把握し、自分たちのシステムに必要な信頼性とあわせて慎重に検討する必要があります。

 

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レイテンシー

コンポーネントの健全性の監視において、対象パラメーターの正確な測定だけでなく、測定値を適切なタイミングで提供できることが大切です。そこで重要になるのがレイテンシーです。

ここでのレイテンシーは、ワイヤレスネットワーク内のあるノードから別のノードまでデータパケットを送信するのにかかる時間を指します。レイテンシーは、別々のデバイスに搭載された異なるセンサーの測定結果を同期させる場合においても非常に重要になります。

レイテンシーの測定は通常ミリ秒単位で行われます。またワイヤレスネットワークのレイテンシーは基本的に固定値ではなく、ネットワーク構成と選択したパラメーターに応じて変化します。

レイテンシーを小さくする場合、基本的に消費電力が大きくなります。そのためレイテンシー関連のパラメーターは、許容可能なレイテンシーと消費電力のバランスを考えながら慎重に選択する必要があります。これは特にバッテリー駆動のデバイスに当てはまります。

また、送信パケットサイズもレイテンシーに大きな影響を及ぼします。パケットサイズを小さくすると、レイテンシーの値も低くなることにも留意しましょう。

通信距離

通信距離は、送信機と受信機の間で、パケットの損失を最小限に抑えた信頼性の高い通信が可能な最大距離を指します。製造工場のような大規模施設における状態監視では、通信距離が非常に重要になります。

ワイヤレスネットワークの最大通信距離は、主に以下の特性によって決まります。

  • 送信出力
  • 受信感度
  • ネットワーク周囲の環境(湿度、人間や動かない障害物、同一周波数帯の無線信号からの干渉等)
  • メッシュネットワークのノード数とノード間の距離

機器の送信出力については、国や地域ごとに制限を設ける法令や規則が定められている場合が多いため、ご注意ください。また、省電力のワイヤレス技術では、消費電力を抑えるための仕様として送信出力を制限しているのが一般的です。

消費電力

状態監視を導入する場合、既存の機器をまるごとワイヤレスセンサー内蔵の新しい機器に交換するほどの余裕は無い場合がほとんどです。そんな中、より一般的に行われているのが主要パラメーター測定用のワイヤレスセンサーデバイスを機器に取り付けるという対処方法です。

センサーデバイスをコンポーネントへ直接取り付けるのは困難な場合が多く、バッテリーで動作するデバイスを使用するのが一般的となっています。こういった観点からも、消費電力は慎重に検討すべき重要なパラメーターなのです。

消費電力に影響を及ぼす特性は多数ありますが、以下が例として挙げられます。

  • データ送信の周波数(無線がオンになる時間)
  • データ送信量(無線が有効になる時間)
  • 送信出力
  • 周辺の環境と、その環境がデータの再送信に及ぼす影響
  • 一部のネットワークパラメーター設定

無線コンポーネントはチップセットの中で最も消費電力が大きい場合が多いため、省電力ワイヤレス技術はデータ通信におけるデューティ比を抑えることを目標としています(無線コンポーネントがオンになる時間が伸びるほどデバイスの消費電力は大きくなるため)。

状態監視に適したワイヤレス技術の比較

それでは、これまで見てきた信頼性、レイテンシー、通信距離、消費電力といった特性をもとに、どのワイヤレス技術が状態監視に最も適しているかを見ていきましょう。

状態監視に最も適したワイヤレス技術を以下にご紹介します。

  • Bluetooth® Low Energy
  • IEEE 802.15.4ベースの技術(Thread、Zigbee)
  • Wi-Fi
  • LPWAN技術(セルラー系および非セルラー系):  LoRaWAN、LTE-M、NB-IoT

ほかにもWirelessHARTやISA 100.11aなどがあります。いずれもIEEE 802.15.4規格を一部ベースとしています。

WirelessHARTは、複数のベンダー間で相互運用性を確保することを目標に開発されたワイヤレスプロトコルです。産業分野に特化した設計となっており、時刻同期と自己修復型のメッシュ構造をサポートしています。ISA 100.11aもオートメーションと制御分野を対象に開発されており、メッシュトポロジーをサポートしています。

それでは、これまで挙げてきた特性の観点から、これら一般的な技術を比較してみましょう。

ユースケースごとの分析

状態監視と一口に言っても様々なユースケースがあり、それぞれに適した技術が異なる場合があることに留意しましょう。

例えば、高帯域幅で大容量のデータ転送を必要とする場合は、上記の技術のなかでもWi-Fiが最適です。LTE-Mも適していますが、それ以外の技術ではニーズを満たすのは難しいでしょう。

屋外や郊外での使用といった、低帯域幅や長距離通信が求められる場合は、LPWAN技術が最適です。

とはいえ、こういったユースケースは状態監視においてさほど一般的ではありません。それ以外の用途ではBluetooth® Low Energyが柔軟性、消費電力、レイテンシー、信頼性、および通信距離の特性のバランスに最も優れており、ニーズを最も満たしやすいソリューションとなっています。

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